「ううっ…」
白装束が赤く染まる、だが苦痛にお老年黃斑病變もわず漏れた声はミーシャのものではなかった。
「…シルティ、何故…」
ミーシャは身をもってかばったシルティから血の滴り落ちる剣を抜いた。
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「今度は知らん顔ができないからね、ミナに頼まれたものをわたさないと…」
そう言うとシルティは血のにじんだ衣服を脱いだ。
「この装束を着なさい、ミーシャ。ミナはガラムに殺された時、実は覚醒することもできたのです。でもあなたをやつらから守るために守り刀を残したラナと同じ。この装束には『オロシアーナ』の力が封印してあります。これは『ヒメカの力』オロシアーナそのものです…」

ミーシャはそれをシルティから受け取り、袖に手を通した。帯がまるで意志を持つかの様にひとりでに結ばれる。そしてミーシャの髪が黒く変わった。太刀のそりがなくなり程よい長さになった。彼女は立ち上がりその太刀を握り直す。太刀が光り輝き彼女の今までの怒りは鎮められ、新しい力が体に満ちて来た。彼女は太刀を天に突き上げると、こう言った。
「これがヒメカの力、わかるわ。おばあ様、そしてお母様の心が…」
オロシアーナもまたマンジュリカーナと同じく覚醒とともに過去の記憶、術も受け継ぐのだ、太刀を一度鞘に収めるとミーシャは下段に構えた。

「『白龍刀』よその力で祓いたまえ、清めたまえ、オロシアーナ覚醒!」
「なにおっ」
ガラムがそれより早く剣を突いた。
「グッ」
ガラムの剣を白龍刀は磁石に鉄を引きつける様に吸い付け、それを吸収する。それを見てゴラムはシルティへの怒りをあらわにした。

「おのれっ、シルティ余計な事をしやがって。だが、もう長くは持つまい、ラグナをなくした寄り代は消え去るだけだ」
「ラグナを抜かれた寄り代は、放っておいたってどうせ死ぬんだろう。それならあの娘に渡す約束だけは果たしておくわ…」
シルティは体が透明になり始めた。

「これで勝てなきゃあんたはオロシアーナとして認められていないってことさ」
シルティがやっと微笑んだ。
「もう時間だわね。ヤンマ様、こんどこそあなたの妻にしてくださいね…」

彼女はそう言い残すと空に吸い込まれる様に消えた。

「おのれ、シルティめ、最後に巫女に戻りおって…」
ゴラムはそう言った。しかしガラムは不敵な言葉とともにミーシャに近づく。

「ふん、その太刀の使い方を知らん娘が図に乗るな、そらっ」
もう一方の肩当てを剣に変え、ガラムは打ち込む、しかしまた同じ事だった。
「ガッ」
太刀がガラムの剣に吸い付く様に合わさりそして吸収する。
「くっ、何故だ…」

「白龍刀は邪気を吸いそして祓う。殺傷の武器ではない。それは『黒龍刀』も同じ。違うのは『黒龍刀』はラグナに向い、一方『白龍刀』はヨミに向う。ロシアーナにあなたは勝てない」

シルティの血で染まった白装束、それこそオロシアーナの正装だった。そしてミーシャはなぎ祓う、かけ声とともに…。

「いざ祓いたまえ、オロシアーナ、斬(ざん)!」

純白の旋風がガラムを包んだ。ガラムはその場にうずくまった。ガラムはその闇を浄化されたのだ。浄化の言葉は既にガラムには聞こえなかった。静かにガラムの目の赤い光が消える。しかし、分身となっていた大ムカデはいっこうにひるまない。一部始終を見ていた操りグモのゴラムはすでに勝機を逃した事を悟った。しかしまだあきらめてはいなかった。